ボーカルの死から22年…伝説のバンドを描いた超大作、メンバーが今だから語れる本音

「映画:フィッシュマンズ」【写真:(C)2021 THE FISHMANS MOVIE】
「映画:フィッシュマンズ」【写真:(C)2021 THE FISHMANS MOVIE】

「彼らを説明するものがなかったら、彼らのサウンドは途絶えてしまうかもしれない」

 製作にあたっては書籍、雑誌、映像を全部集め、バンドを知らないスタッフとも共有できるように1冊の資料をまとめた。「『フィッシュマンズ』はサブスクの影響もあって、海外でも人気が出てきているので、日本でもさらに彼らの音楽が広がっていくと思います。佐藤さんが生きていたら、フェスのヘッドライナーを務めるくらいの実力があるバンドだと思っています。でも、新しい世代、これからフィッシュマンズに出会う人たちに、彼らを説明するものがなかったら、彼らのサウンドは途絶えてしまうかもしれない。だから、最初は『フィッシュマンズのすべて』と題して、フィッシュマンズの全てを描こうと思いました」

ドラマ、アニメ、アイドル、K-POP、スポーツ…大人気番組が目白押しのお得キャンペーンを実施中(Leminoサイトへ)

 インタビューは計40日間かけて行い、そのデータ量は12テラのバードディスク4個分、過去映像12テラバイト1個のハードディスクになった。「最初に編集でつなげたら、7時間以上になりました。メンバーは当時、取材などであまり本音の部分を語ってこなかったと思うんですが、今回のインタビューでの言葉は、うそ偽りないと思っています。それは、佐藤さんが亡くなって20年以上がたったからこそ、話せることもあったんだと思います」

 その佐藤さんは99年3月15日、33歳の若さで心不全のため死去。具体的な死因は今も公表されていない。「佐藤さんは、音楽に対して絶対に妥協しないストイックな方。映画の中でも語っていますけど、高いキーを歌う中、酸素スプレーなしに立てられない状況になったり、ライブの後には、高熱が出たり、体も心もすごいところまで追い込んで音楽の為に生きた方だと思います」

 楽曲の魅力は詞にもある。多くのアーティストは曲先行で、詞を乗せていくスタイルだが、佐藤は詞を元に曲作りした。「佐藤さんの曲作りは誰も見ていないんですけども、言葉を曲に乗せるヒップホップのような作り方だったのかもしれない。佐藤さんの詞はどんな時も刺さる。風景が見えるというか、誰にも当てはまる風景をしっかり描いている。『POKKA POKKA』(97年のアルバム『宇宙 日本 世田谷』収録)だったら、『眠っている顔が一番好きだから』という詞があるんですけど、誰もが大切な人の顔を思い浮かべることができる。そういった言葉選びは、初期のころから一貫しているので、過去の作品にさかのぼって聞いても共感できると思います」

次のページへ (3/4) 誰かの人生を変える音楽「やりたいことがあるなら、とことん突き詰めてやってみる」
1 2 3 4
あなたの“気になる”を教えてください