【私の宝物】“怪談家”稲川淳二が明かす恐怖体験 衝動買いのお宝ライトが招いた富士の樹海での出来事

タレントとして活躍し、現在は“怪談家”として「稲川淳二の怪談ナイト」の公演を毎年行っていて、7月スタートのツアーで29年連続となる。そんな稲川さん、自らを「物欲の人」と語る。衝動買いの連続で、自身の工房には物がいっぱい。宝物はその中にあるとか……。

お宝の米国製ライトを持参した稲川淳二さん【写真:山口比佐夫】
お宝の米国製ライトを持参した稲川淳二さん【写真:山口比佐夫】

物欲の世代で次々と衝動買い

 タレントとして活躍し、現在は“怪談家”として「稲川淳二の怪談ナイト」の公演を毎年行っていて、7月スタートのツアーで29年連続となる。そんな稲川さん、自らを「物欲の人」と語る。衝動買いの連続で、自身の工房には物がいっぱい。宝物はその中にあるとか……。(取材・文=坂本俊夫)

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「戦後間もない昭和22年生まれで、日本にはまだ物がなかった。私は渋谷の生まれで、近くに米軍住宅がありましてね。姉やいとこが向こうの人に呼ばれて遊びに行って帰ってくると、何があった、かにがあったと話すんです。向うの子どもが乗っている自転車なんかかっこよかった。そういう物一つ一つに憧れていた。自分たちには手に入りませんから。日本全体がそうでした。だから私の世代は物に対する思いはものすごく強いんじゃないですか。物欲の世代なんです。昔タレントをやっていて、クイズ番組に出ると、1番の賞品が海外旅行で、2番がスクーターだと、スクーターのほうが欲しいんです」

 大人になり、経済的にゆとりができると、この物欲が存分に発揮される。バリ島で木彫の工房を訪ね、バナナの木で作った3メートルもある鳥の木彫を欲しがり、ついでにその工房の商品を300万円分まとめ買いしたり、昔上海でドイツ人が作ったという軍人が使うような双眼鏡を買ってみたり、草野球で使おうと、サイレンを手に入れ、多摩川で試合を始める時に鳴らしたり(近くの工場の人が来て、休憩のサイレンと紛らわしいからやめてくれといわれた)、大きい釣針みたいなものを買って、風魔忍者(戦国時代に小田原北条氏に仕えたといわれる忍者)が使った忍び道具だと嘘をついてみたりといろいろ。そんな中で「これが宝物です」と見せてくれたのが照明器具。

「アメリカ製のライトです。正式な商品名は分かりません。車のヘッドライトよりも何倍も遠くまで届き、しかも光が広がらない。サーチライトみたいなものです。30年くらい前に買ったので値段は忘れちゃいましたが、これが二つあります。当時、深夜の恐怖番組の脚本・監督などを手掛けていて、樹海でのタクシーのシーンのロケで使えるなと衝動買い。二つを固定して動くとタクシーが走っているように見えるんです。で、撮影に使いました。ところがこれ、充電に21時間かかり、使えるのは30分。ある年の4月に入った頃、富士の樹海での撮影。もちろん夜。このライトの威力はみんな知っていたので、カメラさんも誰も照明を持たずに樹海に入った。ところが、うっかりして30分を過ぎちゃったんです。いきなり真っ暗。みんなパニックです。寒いし、暗いし。何しろ樹海ですからね。下手すると帰れなくなってしまう。『助けて』って叫ぶスタッフもいるし、泣き出すスタッフも。もう悲惨でした。ライターなどの明かりを頼りに何とかみんな無事に戻りました。そんな思い出のある宝物です」

 けん玉も物欲コレクションの一つ。若い頃から全国で買い集めたものが200個ほどあるとか。

「テレビの仕事をしていたとき、全国に行った。『外回りの淳ちゃん』でしたから。その関係もあって怪談ネタも随分集まった。有名なところで行っていないのは北方領土と小笠原だけです。ただロケだけで行くのももったいないと思い、当時けん玉が各地で売られていて、集めてみようと、ロケ、取材のたびに買いました。伊勢神宮のおかげ横丁の入口にけん玉を作っている工房があって、大きいけん玉があったので、売ってもらえないかといったら、これは時間たっているから、同じものを作りますからと作ってもらったり、青森では赤ん坊くらいの大きさのけん玉を見つけて即購入したりで、珍しいけん玉がいっぱいです。富士の樹海で迷ったとき、杖にした木を持って帰って、けん玉を作ったことも。道具は工房にありますから。売っているもので気が済まなくなると、自分で作ったりもするんです」

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