コロナ禍を打破 創業187年目の千疋屋総本店が描く新戦略「いかにこちらからお客様に近づいていくか」

千疋屋。果物と言えば、この名前を思い出す方も少なくはないだろう。創業は1834年というから実に江戸時代の後期。現在では6代目になる日本橋 千疋屋総本店だが、創業からここまでの間には「銀座千疋屋」「京橋千疋屋」とのれんわけを行い、それぞれ別の法人に。日本橋 千疋屋総本店は果物を中心とする商品を販売する店舗のほか、フルーツパーラー、レストランなども手がけるまでに成長した。今では日本橋 千疋屋総本店は東京・神奈川・千葉・埼玉に16店舗を展開。“千疋屋ブランド”は確固たる地位を築き上げた。コロナ禍の下、ブランド力をいかに継承し、次の世代へと受け継いでいくか。現状と今後に関して、日本橋 千疋屋総本店の進むべき道を大島有志生常務取締役に聞いた。(取材・文=“Show”大谷泰顕)

“果物屋の老舗”千疋屋【写真:ENCOUNT編集部】
“果物屋の老舗”千疋屋【写真:ENCOUNT編集部】

コロナ禍でネット販売の売り上げは大きく伸びる

 千疋屋。果物と言えば、この名前を思い出す方も少なくはないだろう。創業は1834年というから実に江戸時代の後期。現在では6代目になる日本橋 千疋屋総本店だが、創業からここまでの間には「銀座千疋屋」「京橋千疋屋」とのれんわけを行い、それぞれ別の法人に。日本橋 千疋屋総本店は果物を中心とする商品を販売する店舗のほか、フルーツパーラー、レストランなども手がけるまでに成長した。今では日本橋 千疋屋総本店は東京・神奈川・千葉・埼玉に16店舗を展開。“千疋屋ブランド”は確固たる地位を築き上げた。コロナ禍の下、ブランド力をいかに継承し、次の世代へと受け継いでいくか。現状と今後に関して、日本橋 千疋屋総本店の進むべき道を大島有志生常務取締役に聞いた。(取材・文=“Show”大谷泰顕)

――今回は、千疋屋ブランドの秘密を探っていきたいと思います。

「秘密なんて特別なことはしていないですよ。実際、それはどこの会社もそうでしょうけど、当店に関して言えばバブル崩壊以来、(コロナ禍になって売り上げが)久しぶりに落ちましたしね」

――具体的なコロナの影響は?

「去年は緊急事態宣言中、店を閉めていましたよ。やっぱり日本橋 千疋屋総本店で言えば、1階の売り場はありがたいことにそこそこ売り上げもあるけど、2階のフルーツパーラーは大きなダメージがありますね。典型的なのは銀座、日本橋、新宿などの都市型のお店の売り上げは落ちた一方、玉川高島屋、浦和の伊勢丹、横浜高島屋などの、いわゆる郊外型、住宅街のお店の売り上げが伸びている。個人の消費比率は上がっています」

――外食ができない分、ちょっとしたゼイタクをしようという雰囲気でしょうか?

「そうでしょうね。ケーキの売り上げも上がっていますし。家でご飯を食べるなら、少しデザートにお金を使おうという傾向がある気がします。それから顕著なのはインターネット販売の売り上げは大きく上がっている点ですね」

――このご時世、大きく伸ばしたのはすごい。

「たぶん、我々のような贈答主体の商売はネットとの親和性が高い。人に贈る物をネットで購入して届けるんですね。我々のような店にとって、最大のマーケットはお中元になるんですけど、去年はどこまで売れるのかと心配していたらそこそこ売れたんですよ。意外だったけど、ありがたかった」

――となると、コロナ禍でもそれに応じた対策はできた感じですか?

「やれることはやっていると思っています。ただ、ウチは果物専門店ではあるけど、果物だけではなく、お菓子、レストラン、ケーキ、お土産もある。いろんなことをやっていたのが良かった。もし一つに絞っていたら、売り上げも半分以下だったんじゃないかなと思いますね」
 
――一時期はフルーツバイキングが大人気だったとうかがいました。半年先の予約が取れないと聞いたこともあります。

「残念ながら今はやっていないんです。(コロナ禍で)バイキングが難しい状況ですね」

――逆にコロナ禍になってから始めたことはありますか?

「最近やりだしたのは、ケーキの宅配。これは阪急百貨店さんと組んでの試みですね。今まではケーキの宅配ができなかったんですけど、今、都内全域で日の丸リムジンによるタクシー配送を始めました。これが予想以上に売れています。カットフルーツも。ちょっとしたパーティーをするときに、日本橋 千疋屋総本店の果物を食べたいというお客さんのニーズと合ったんじゃないでしょうか」

――ケーキの宅配とは斬新ですね。

「お客様が店に来にくい状況の中で、いかにこちらからお客様に近づいていくか。本当はフルーツパーラーに来て食べてほしいんですよ。やっぱり果物は新鮮さが命だから。ただ、今はそれが難しいわけだから、それになるべく近いかたちで果物を提供させていただく機会を別の方法で考えた結果が宅配になったんですね」

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