「誹謗中傷」と「批判」の違いは? 法律の専門家に聞いた“線引き”と悪質投稿なくす解決策

 一般社会だけでなく、インターネット上においても誹謗中傷が問題化している。SNSは便利で気軽なコミュニケーションツールであるが、悪意のある書き込みだけでなく、ふとしたことで書いた安易な投稿が、相手を深く傷つけ、訴訟に発展するケースもあり得る。民事または刑事的な責任を問われる「誹謗中傷」と、評価の範囲内として理解される「批判」の線引きはどこにあるのか。SNSにあふれる悪質な書き込みをなくすにはどうしたらいいのか。法律の専門家に聞いた。

安易なSNSが刑事・民事責任を問われる可能性も(写真はイメージ)【写真:写真AC】
安易なSNSが刑事・民事責任を問われる可能性も(写真はイメージ)【写真:写真AC】

正木絢生弁護士が解説 SNSのプラットフォーム側による制度強化も課題

 一般社会だけでなく、インターネット上においても誹謗中傷が問題化している。SNSは便利で気軽なコミュニケーションツールであるが、悪意のある書き込みだけでなく、ふとしたことで書いた安易な投稿が、相手を深く傷つけ、訴訟に発展するケースもあり得る。民事または刑事的な責任を問われる「誹謗中傷」と、評価の範囲内として理解される「批判」の線引きはどこにあるのか。SNSにあふれる悪質な書き込みをなくすにはどうしたらいいのか。法律の専門家に聞いた。

 弁護士法人天音総合法律事務所の代表弁護士を務める正木絢生(けんしょう)弁護士によると、「誹謗中傷」は法律用語ではないが、一般的に、「他人を悪く言うこと、根拠のないことを言い触らして名誉を傷つけること」として定義される。「悪口」と同義語でもあるという。

 問われる責任はけっして軽くない。刑事的には、相手が個人に対する誹謗中傷では「名誉毀損罪」「侮辱罪」、企業(会社・店舗)や組織に対するものでは、「信用毀損罪」「業務妨害罪」が該当する。一方で、民事上は不法行為に基づく損害賠償や慰謝料を請求される場合がある。例えば、「死ね」という誹謗中傷を書き込んだ場合では数十万円の賠償金、執拗に書き込みを続けるなど悪質性が認められるケースは100~200万円の賠償金もあり得るという。

 それでは、誹謗中傷と批判の違いは何であるのか。個人に向けられた内容の場合、誹謗中傷は「相手の人格に対するマイナスの発言・書き込み」で、批判は「相手の行動に対する評価や相手の主張への反論」が該当するという。

 誹謗中傷のケースで言えば、相手の名前を挙げた上で「死ね」「消えろ」と書き込むのは言語道断だ。ここで、投稿の回数や明確に相手に向けられたのかといった要素で違法性の大小が異なってくるという。ツイッターを例に取ると、自分のアカウントにツイートする場合と相手のつぶやきにリプライする場合とで、違法性の程度に差が出てくるという。この場合は相手へのリプライは、程度が重くなるそうだ。

 また、言葉の内容によっては刑事罰を問うには慎重になるケースもあるというが、「死ね」「死ねばいいのに」「消えろ」といった表現は「民法上の責任は成立する」。正木弁護士は重ねて、「人格を否定するような内容は、法的な責任に問われる可能性が十分にある」と指摘する。

 他に違法性が生じるケースとしては、相手の容姿に関してネガティブな印象を与える内容だ。例えば、「ブス」「太っている」「老けている」という言葉。名指しで投稿したり、相手のSNSのコメント欄に書き込んだりした場合は、責任を問われる可能性がある。対象が一般人だけでなく、イメージ商売でもある芸能人や有名人の場合は、経済的なマイナスの影響を生じさせてしまうこともあり得る。賠償請求額にも関わることにもなり、相手をおとしめる投稿は許されるものではない。

次のページへ (2/3) 誹謗中傷の書き込みをしないようにするには「逆に自分の立場になった時を想像することが重要」
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