授乳室に男が侵入、「怖すぎる」と悲鳴 喫煙や休憩利用の目撃例も…法的問題は?

デパートなどの商業施設の授乳室を巡るマナー違反が物議を醸している。インターネット上に、「隣の個室から男が一人で出て来た! ソファの上にタバコの灰が…」との投稿があり、同じように男性の入室被害を訴える母親の声が相次いでいる。死角になりがちな授乳室という密室を悪用した迷惑行為。問題点はどこにあるのか、弁護士に聞いた。

授乳室でトラブルが…(写真はイメージ)【写真:写真AC】
授乳室でトラブルが…(写真はイメージ)【写真:写真AC】

男が授乳室で電話や仮眠… のぞき行為で軽犯罪法違反が成立する可能性も

 デパートなどの商業施設の授乳室を巡るマナー違反が物議を醸している。インターネット上に、「隣の個室から男が一人で出て来た! ソファの上にタバコの灰が…」との投稿があり、同じように男性の入室被害を訴える母親の声が相次いでいる。死角になりがちな授乳室という密室を悪用した迷惑行為。問題点はどこにあるのか、弁護士に聞いた。

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 発端となる投稿があったのは今月上旬だった。「マタ垢の皆様もお気をつけて…」と注意喚起の言葉で始まり、商業施設での信じられない出来事がつぶやかれた。

 幼い子どもにミルクを与えるため、2つあった授乳室の個室の1つを利用。ミルクをあげていると、もう1つの個室から人の気配がした。中にいたのはなんと1人の男で、そのことを外にいた母から知らされた投稿者が男が出た後の授乳室を見ると、ソファの上にたばこの灰が落ちていたという。

 授乳室は通常、おむつ替えを行うスペースとともにベビールームに併設されている。ベビールームは男女ともに利用できるが、授乳室は男性の立ち入りを禁じているところが多い。個室ではなく、間がカーテンで仕切られているところもあり、女性にとって非常にプライベートな空間のためだ。カギのかかる個室では、夫婦そろっての入室を認めているところもある。

 今回たばこを吸っていた男は30代くらいといい、投稿者はすぐにサービスカウンターに報告。警備員が駆けつけ、授乳室付近を巡回したという。

 この投稿には、「怖すぎる」「授乳室は男性厳禁でしょ」「授乳室でタバコ吸ってる男とか終わりすぎ」など批判が殺到したが、ネット上には、同様の“経験談”も見られた。

「授乳室使ってたらサラリーマン(男)らしき人が入ってきて電話し始めたときのこと思い出した」「男が鍵のかかる授乳室で仮眠してるのがバレて大事になったことがある」「実際に授乳室に男が侵入してる件が稀にある」「夫が表でミルク作って個室に差し入れ&入室してた」「家族4人で授乳室入ったら男が1人で寛いでて、うちら見てそそくさと逃げてった!」

 また、直接の“被害”はなかったものの、「明らかに男の人間が出入口の前にずーっと立ってて授乳室から出られなくなったことある」「授乳室から出た瞬間男性にガン見されたのすごい気分悪かった」との声もあった。

 授乳室に男性が入ることにどのような問題があるのか。レイ法律事務所の浅井耀介弁護士は次のように語った。

――男性の入室禁止が明記されている授乳室に男性が入ることに法的に問題はありますでしょうか。

「まず、男性の立ち入りが禁じられている授乳室に、正当な理由なく男性が立ち入ることで、軽犯罪法(※1)違反が成立する可能性があります。この場合、30日未満の拘留又は1万円未満の科料に処せられます。また、授乳室がカーテンのような簡易的な仕切りではなく、扉などで明確に仕切られている場合には、ここに正当な理由なく男性が立ち入ることで、建造物侵入罪(※2)が成立する可能性もあります。この場合、軽犯罪法違反よりも法定刑は重く、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処せられます。なお、立ち入るだけでなく、カーテンをめくるなどして授乳室をのぞき見た場合には、立ち入りとは別に、のぞき行為として、軽犯罪法違反が成立する可能性もあるでしょう」

――男性の入室禁止をうたっていない場合はいかがでしょうか。

「施設管理権者が男性の利用を明確に禁止しておらず、『男性の利用はご遠慮ください』というように、男性側に任意の協力を求めるにとどまっているような場合には、犯罪に該当しない可能性もあります」

「レイ法律事務所」の浅井耀介弁護士【写真:本人提供】
「レイ法律事務所」の浅井耀介弁護士【写真:本人提供】

忘れてはいけない無防備な女性への配慮 「近くにいるだけで女性は恐怖感」

――妻から授乳室に「ミルクを運んで来て」と言われて一時的に夫が立ち入る場合はいかがでしょうか。

「正当な理由があれば、男性が授乳室に立ち入ったとしても犯罪が成立しない可能性はあります。ただ、マナーの観点からは控えた方がよいでしょう。例えば、これが女子トイレ内で母親が授乳している場合であれば、一時的とはいえども女子トイレに立ち入ってまで協力する男性は多くないでしょう。

 もちろん、男性も積極的に育児参加すべきではありますが、無防備になってしまう授乳中の女性に対する配慮を忘れてはいけません。授乳中に知らない男性が近くにいると、それだけで女性は恐怖感を覚えるだろうと思います。最近では、授乳室とは別に、男性も自由に出入りすることのできるベビールームを設けている施設も多いですから、男性が育児をする場合にはそちらを利用することで足りるのではないでしょうか」

 ベビールームや授乳室を利用する場合は、入口にある施設の注意書きをよく読む必要があると言える。

 最後に万一、授乳室で男性を見かけた場合、どのような手順を踏めばよいのだろうか。

 浅井弁護士は「授乳室内で男性を見かけた場合、速やかに施設の警備員などに伝えることが望ましいでしょう。授乳中に男性の気配を感じた場合など、自ら警備員を呼ぶことが難しい時もあるでしょうから、イヤホンなどで通話をつなぎながら、何かあった場合にはすぐに動ける家族や知人に外に待機しておいてもらう、といったことも自衛策の一つかもしれません」と語っている。

※1 「軽犯罪法」
1条32号:正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者
1条23号:入ることを禁じた場所又は他人の田畑に正当な理由がなくて入った者

※2 「建造物侵入罪」(刑法130条)正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する

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